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2010年8月30日 「Kulturmeilenfest 2010」

パンフレット「Kulturmeilenfest」が2010年8月29日(日)に催された。場所はザールラント州立劇場、ザールラント音楽大学、ザールラント美術館。2年前の開催はそれらの場所を結ぶビスマルク通りで色々なものが開催されたが、今年はザールラント美術館の拡張工事のため、ビスマルク通りではなく、ザール川沿いに特設ステージなどが設けられた。このイヴェントは文化祭のようなものであるが、例えばザールラント州立劇場では練習や衣装制作の舞台裏も公開されているので、言ってみれば劇場の一般公開(Tag der offenen Tuer)」に近いものだった。

この日は最高気温が15度、最低気温が8度だったが、時折冷たい雨も降って数字以上に寒く感じられた一日だった。翌日の新聞などによると来場者数は約11000人で前回よりも6000人ほど少ないという。やはりその天候が影響しているのだろう。前日の土曜日夜に行われたプロムナーデコンサートのゲネプロ(総稽古)は寒い中だったので観客の数もまばらだった。2年前は気温が25度を超えていたので、ゲネプロにもかかわらず多くの人が音楽を楽しんでいたが、その光景とは大きく違っていた。

日中、一度劇場を訪れてみたが、このときは雨が降っていなかったからか、思った以上に人の出入りがあるという印象だった。午前中に同劇場であったドイツ・ラジオ・フィルハーモニ管弦楽団のコンサートも満席だったらしい。午後から雨が降ったり止んだりといった天候が続き、夕方には劇場前に設けられた客席(長いす)が撤去され始めた。特設ステージだけが、ぽつんと取り残されているようで非常に寂しい光景となっている。

午後8時からのプロムナーデコンサートは会場を劇助前から劇場ホールに移して上演された。屋外でのコンサートならば、アイスクリームやクレープ、肉料理の屋台が並んでいるので、それらを食べながら、またビールやゼクト、ジュース、コーヒーを飲みながらコンサートを楽しむことが出来る。しかし劇場内では着席しなければならず、非常に落ち着いた雰囲気がある。7時半過ぎにホールを訪れたが、下の階は既に埋まっていたので最上階で見ることにした。開演頃には立ち見まで出る状態となった。

午後8時過ぎに司会である二人がステージ上に姿を見せた。同劇場総支配人ダクマー・シュリンクマンとオペラ監督ベルトルト・シュナイダー。ザールラント州立オーケストラをこの日指揮するのは第一常任指揮者のアンドレアス・ヴォルフと、今年からその地位に就いた第二常任指揮者のトーマス・ポイシェル。

屋外でのコンサートの場合、その曲が盛り上がると歌手が再び舞台に顔を出して、観客も更に大きな拍手となるが、この日は一曲一曲演奏が終わるごとに総支配人とオペラ監督が出てきて、次の曲の解説を行った。進行を急いでいる気配がある。外でのコンサートの場合、観客は自由に移動し、トイレにも自由に行くことが出来るが、ホールでのコンサートは自由に移動することは出来ず、休憩なしのコンサートとなったので、もしかするとそういったことに対する配慮なのかもしれない。果たして公演後はトイレには列が出来ていた。

また前日のゲネプロではミュージカルの演奏の時は観客もステップを踏むなど何処か盛り上がっていたが、ホールでは大人しい観客の前で音楽だけが浮いているといった印象があった。やはり外と中では同じコンサートでも雰囲気が違っている。しかしいずれにしても外の予定が屋内に変更になったので舞台設備の準備等は大変な作業だったに違いない。

ところでこのプロムナーデコンサートは新シーズンの作品が上演され、言ってみれば新シーズンのお披露目である。この日もオペラやオペレッタなど幾つかの作品が演奏された。中でもアンコールの「トゥーランドット」(プッチーニ)のアリア「誰も寝てはならぬ」はものすごく盛り上がった。コンサート本編、最後の拍手の際、劇場内は手拍子のような拍手になり大いに盛り上がった中で、このアリアが演奏された。その盛り上がりが更に大きくなり、音楽が終わる前に大きな拍手がわき起こり、中には立ち上がって拍手をしている人もいた。この作品で終わればコンサートは大成功だったに違いない。

しかしアンコールはもう一曲あった。今シーズン再演されるパーセル「ディドとエネアス」のアリアだった。落ち着いた作品で非常にしんみりとしている。それまで盛り上がった空気が一気にしぼんでしまうような雰囲気が拡がった。この曲を歌ったのはソプラノ、エリザベス・ワイルズ。彼女自身はコンサート本編でソロを歌っておらず、ソロを歌うのはこのアリアだけだったが、このプログラムは彼女にとっても辛いものだったに違いない。プログラムの最後にこの曲を持ってきたのは、おそらく劇場が彼女を劇場の顔として位置づけているからかもしれない。演奏は良かったが、出てくるタイミングがそうではなかった。

そういえば前回、2年前のプロムナーデコンサートも2曲アンコールが予定されていたが、1曲目が非常に盛り上がったため、そのまま2曲目に進める雰囲気がなく、観客だけでなくオーケストラも舞台を降りてしまった。そのときアンコールを歌う歌手は、その曲のためだけに会場に来ていたが、歌うことなくコンサートが終了してしまった。いずれもプログラムの組み方に問題があったと言えるだろう。今回のプロムナーデコンサートはある意味、歴史に残るコンサートになったかもしれない、友人たちともそんなことを言いながら会場を後にした。


劇場入り口

劇場入り口


プロムナーデコンサートのカーテンコール

プロムナーデコンサートのカーテンコール



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