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2008年9月1日 「Kulturmeilenfest」

パンフレット「Kulturmeilenfest」が2008年8月31日(日)に催された。場所はザールラント州立劇場、ザールラント音楽大学、ザールラント美術館。このイヴェントは一言で言えば文化祭のようなものであるが、例えばザールラント州立劇場では練習や衣装制作の舞台裏も公開され、文化祭というよりは、どちらかと言えば劇場の一般公開(Tag der offenen Tuer)」に近いものだった。

その週の初め、つまり月曜日から劇場前の広場に仮設ステージの建設が始められ、そして劇場正面には「8月31日、『Kulturmeilenfest』」という幕が掲げられた。街中に大きく看板が出ていたわけでもないので、何処かひっそりとした宣伝のようにも思われる。

そして当日31日の午前11時から上記の場所で幾つかの催しが始まった。正午前に会場を訪れたが、上記の場所は隣り合った建物なので、一部の道路は車の通行が制限されており、そこは歩行者専用道路のようになっていた。その周辺に多くの人が集まっている

ところで、この日はちょうど日本から知り合いが来ていたので、その人を案内しながら、幾つかのイヴェントを回ってみた。劇場内の狭い廊下や階段の中には、このイヴェントを訪れた人で溢れている所もあり、普段見られない劇場の裏側に関心を持っている人は多いように思われる。合唱の練習を見学したあと、バレエのところを覗き、そして劇場ホールを覗いてみた。ちょうどドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団(かつてのザールラント放送響、指揮クリストフ・ポッペン)の演奏中で、それはラジオを通して生放送されていると言うこと。そういえばこの周辺にはザールラント放送局の紺色の車が何台も止まっていた。それら以外にもバレエ関連やコンサートなど幾つか見てみたいものがあったが、時間の都合もあって見ることが出来なかったのは残念だった。

ところで劇場前の仮設ステージでは20時よりザールラント州立オーケストラのコンサートがある。オーケストラだけでなく、ソリストや合唱も出るガラコンサートといった感じの催しだ。指揮は暫定音楽総監督のコンスタンティン・トリンクスと劇場第二指揮者のクリストフェ・ヘルマン。演目は2008/09年シーズンの作品の一部を中心に演奏される。言ってみれば新シーズンのお披露目を兼ねている。そのコンサートが始まる前に自分は広場に到着した。その日は気温が25度を超える少し暑い日で、外ではビールやワインを飲みながらステージ前に並んだベンチに腰掛けている人の姿もあった。

その20時開演の少し前に、雷の音が響きだした。それまで青空が拡がっていたのに、ドイツ(ヨーロッパ)特有のGewitterゲヴィッターという夕立が来る気配があった。風も冷たくなっている。雨の匂いもほとんどなかったので、そのまま雷が鳴っているだけかと感じたが、黒く分厚い雲が近づいてきて雷の音も大きくなってきた。そして近くに落ちる音。そして開演10分ほど前に突然、大粒の雨が降り出した。手を頭にやって急いで屋根の下に逃げ込む人たち。

自分は劇場の建物壁際で、もたれていたので直接、雨には当たらなかったが、それでも風が強く、流れてくる雨が劇場の壁の色を濃い色に染め始めた。同じ場所に立っている人たちは屋根の下で傘を差している。その頃、劇場総支配人ダクマー・シュリンクマンがステージ上からマイクを使って挨拶をした。「雨が降り始めましたが、もう少し我慢して待っていてください」といった感じのことを言っている。何人かの人はステージの直ぐ前で傘を差しながら、コンサートが始まるのを待っていた。このコンサート、雨天の場合は劇場内で行うとあったが、開演前の突然の雨では、やはりそのまま外でなされるだろう。何よりオーケストラの人たちが雨の中、楽器を持って移動するのは難しい。

20時少し回って、劇場総支配人が舞台に登場し再度挨拶があってコンサートが始まった。まだ雨は降り続いているが、空には黒い雲も見えず、晴れ間も覗いている。おそらく暫くすると雨も止むに違いない。そう感じた人が多かったのか、ぞろぞろ多くの人がステージ前のベンチの方に移動していった。自分は何度か移動したが、結局最初にいた壁際のところでもたれながら音楽を聴いていた。このコンサートでは集音マイクが使われ、スピーカーからも音が流れていたが、劇場直ぐ側の所では舞台やスピーカーからも遠いので、音もそれほど大きくなく何処か客観的にコンサートを観ていると言った感じだった。

劇場総支配人とオペラ部門責任者が曲と曲の間に解説を入れ、コンサートが進んでいった。既に陽が傾いた午後10時前に最後の曲が演奏された。大きなブラヴォーが飛び、みなが拍手をしている。舞台上には当日歌ったソロの歌手たち。女性陣はドレスを着ているが、それ以上に印象に残ったのは、黒のスーツに真っ赤なネクタイを締めていた指揮者トリンクスであった。その赤が遠くから見ても目立っている。そして責任者が舞台袖に現れ「その拍手に応えてアンコールです」といって、アンコールの作品が演奏された。

そのアンコールではアリアの最後も決まり、大いに盛り上がってその曲が終わった。観客もその日、最も盛り上がったときかも知れない。拍手や声援が続いて、多くの人が満足しながら、ステージ前から解散し始めた。オーケストラの人たちも立ち上がっている。

と、コンサートが終わりを告げたが、実はアンコール曲はもう一曲予定されていた。というのは前日の夜、この仮設ステージでゲネプロ(総稽古)が行われた。野外なので、当然公開ゲネプロである。この日もビール片手に聞いている人たちの姿があった。ベンチは人で一杯だったので、何も知らなければコンサート本番と思うかも知れない。それほどの人がそこにはいた。そしてそのゲネプロでは当然、アンコールの練習もあった。そのときのアンコールは2曲用意されており、その練習が行われた。

しかし、本番では一曲だけで終わってしまった。おそらく、最後に相応しいほどに盛り上がって、まさかもう一曲あるとは思わなかった観客が多かったに違いない。観客が移動しているので、演奏する方にとってももう一曲演奏するのは難しい雰囲気だったのかも知れない。ところでアンコールのその2曲、それらを歌うのは劇場の看板となる人たちである。ただ疑問なのは、彼らはコンサートの本編では一曲も歌っておらず、アンコールのためだけの登場となった。しかも2曲目を歌う歌手は、出番無くこの日のコンサートが終わってしまった。コンサートの最後にそういった看板的な人たちを持ってきたのは、コンサートを盛り上げるためだと思うが、それまで一曲も歌っていないのは、どこか疑問が残る選曲・曲順と言えるかも知れない。しかしいずれにしてもコンサートは盛り上がり、色々な演奏を聴くことが出来、自分にとっても良い時間であった。

翌日のニュースを見てみると、この「Kulturmeilenfest」には約2万人の人が訪れたと言うこと。今回の催しは天候に恵まれたこともあると思うが、その数字には、単純に音楽を楽しんだ、劇場の舞台側を見たという人たちだけでなく、もしかすると将来、そういったことに従事する可能性のある子供も含まれているだろう。


劇場入り口

劇場入り口、天気も良い。


劇場内の階段に展示された写真

劇場内の階段に展示された写真


劇場でのコンサート

劇場でのコンサート


車両通行止めされた通り

車両通行止めされた通り






屋外コンサート

屋外コンサート
挨拶をする劇場総支配人(左)とオペラ部門責任者(右)


舞台衣装のデザインなど

舞台衣装のデザインなど


バレエの催し会場

バレエの催し会場


劇場内ではテレビカメラが回っていた

劇場内ではテレビカメラが回っていた


音大横の仮設ステージ

音大横の仮設ステージ
ビールを飲みながら楽しんでいる人たちもいる。


屋外コンサートの模様

屋外コンサートの模様



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