Homeザールブリュッケンでの日記 > 州立劇場「テアターフェスト」

2009年9月8日 州立劇場「テアターフェスト」

テアターフェスト当日2009年9月6日(日)にザールラント州立劇場において「テアターフェスト」が催された。昨年までは同劇場だけでなく、ドイツ・ラジオ・フィルハーモニ管弦楽団やザールラント音楽大学、ザールラント博物館など共同で文化祭的な催しだったが、今年は劇場とドイツ・ラジオ・フィルハーモニ管弦楽団の日程が上手く合わず、ザールラント州立劇場だけの催しとなった。それ故、イヴェント名も文化祭的な「Kulturmeilenfest」から単純に「テアターフェスト(劇場フェスト)Theaterfest」となった。

昨年もそうだったが(昨年の日記はこちら)、同劇場で行われる催しは、今年も「劇場の一般公開」といったものだった。劇場内の様々な場所で催しがある。幾つかのコンサートや合唱の公開練習、バレエのワークショップなど。その他に劇場案内(ドイツ語・フランス語)や衣装を見せるだけでなく、余った布の販売やテクニックショーなど裏側に関することも含め、劇場に関するものを紹介・体験できる催しだった。

自分は昨年と同じように合唱の公開練習を訪れた。合唱をどのように作っていくか、約一時間だが見ているのは面白い。また今年は合唱指揮者も新しい人に変わった。昨年までのパブロ・アッサンテは今シーズンからドレスデン、ゼンパーオペラの合唱指揮者となったので、ザールラント州立劇場の方でも後任を決めるオーディションが何度も行われたと言うこと。新しい指揮者はジェイミー・ミランダという人物。どういった練習をするのか楽しみにしながら合唱の練習室へと向かった。

昨年も合唱の公開練習には多くの聴衆が来ていた。50席ほど用意されてあったが直ぐに一杯になっていたので今年も同じぐらい人が入るだろうと予想はしていたが、実際にはそれ以上の人が入っていた。立ち見の人もいる。そういえば、新しい指揮者ミランダが聴衆に向かって挨拶をしているとき、突然、合唱の人たちが歓喜の声に似たような声を挙げた。皆が注目する方に目すると、そこには前合唱指揮者のアッサンテの姿がある。何故彼がそこに顔を出したか理由は知らないが、練習室内の温度はそれで少し上がったかも知れない。

ところで新しい指揮者ミランダの演奏、これは非常に丁寧でしかも細かい。自身がピアノを弾きながら歌うだけでなく、身振り手振りを付けながら指導している。分かりやすくそれが合唱の人たちにもしっかりと伝わっている印象を受けた。

ところでこのテアターフェストの最大のイヴェントは州立劇場前のトビリシ広場に設置された舞台で行われるプロムナーデコンサート(野外コンサート)だ。午後8時から行われるが、昨年はその直前に強い雨が降ったことを思い出した。気温も高く暑い一日だったが、今年は既に肌寒く、コンサート当日、舞台袖で待つ歌手陣はコートを着用していた。この日の最低気温は6度、最高気温も19度と上着が必要なほどに肌寒かった。

晴天に恵まれたプロムナーデコンサートは、昨年と同じように劇場総支配人ダグマー・シュリンクマンとオペラ部門責任ベルトルト・シュナイダーが司会を務める。二人の挨拶でコンサートが始まった。また今シーズンから音楽総監督に就任したトシユキ・カミオカ(上岡敏之氏)の姿がなかったのは残念だった。

このコンサートを指揮するのは今シーズン、第一指揮者に就任したアンドレアス・ヴォルフと第二指揮者のクリストフェ・ヘルマン。中でも第一指揮者ヴォルフ、その彼が聴衆の前に現れるのはこのコンサートが初めてなので、どういった指揮をするか非常に楽しみであった。オケの音はマイクを通してスピーカーから流れるので、音の善し悪しは分からないが、それでも分かりやすい指揮をしている印象があった。

第一印象でしかないが、彼の指揮を見て、今年は劇場のレヴェルがさらに上がるような気がした。音楽総監督、第一指揮者、第二指揮者と揃うので音楽的な幅も拡がるだろう。それを思うと昨年、一昨年は指揮者コンスタンティン・トリンクスと上記のヘルマン二人だけでよくやったものだと思う。暫定音楽総監督だったトリンクスはオペラだけでなくシンフォニーコンサートでも指揮を振っていたが、逆にその多忙さが彼自身のレヴェルアップにも繋がったかも知れない。彼は今年からダルムシュタット歌劇場の音楽総監督に就任したが、それらの経験が、現在だけでなく今後にも繋がるだろう。

ところでコンサートの方は今シーズンの演目のお披露目をかねたような内容だった。モーツァルト「フィガロの結婚」、フンパーディンク「ヘンゼルとグレーテル」、ヴェルディ「ラ・トラヴィアータ」、パーセル「ディドとエネアス」、ジョン・アダムス「ドクター・アトミック」、ヴェルディ「オテロ」、シューベルト「シャコンタラ」、リヒャルト・シュトラウス「サロメ」、そういった作品の中から一部が演奏された。ただ演奏には全く関係ないが気になったのは昨年よりも舞台の照明が随分と暗いことだろうか。

コンサートの方は午後10時過ぎに終了した。アンコールは一曲だけだったが、客の方はもう少し音楽を楽しみたいという雰囲気がある。余韻を残した終わり方、それが今シーズンを非常に楽しみなものに感じさせた。


合唱の公開練習

合唱の公開練習


プロムナーデコンサート

プロムナーデコンサート、劇場総支配人(左)とオペラ部門責任者(右)

衣装に関する場所

衣装に関する場所


プロムナーデコンサート

プロムナーデコンサート


▲ページの最初に戻る