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2010年10月22日 「ヨーロッパ・ギャラリー」オープン

炭坑管理局ザールブリュッケン中央駅前にかつて「ザール・ギャラリー」というショッピングセンターがあった。吹き抜けの空間の上には大きなガラス窓があって、決して小さくはないが大きくもないショッピングセンターだった。そしてその横には炭坑管理局の建物があった(右写真)。これは1880年プロイセン王立炭坑局として建てられたもので、文化財保護建築に指定されており、その後はザール炭坑局の本部となっている。

しかしドイツ政府が2018年には石炭の採掘を止めることを決定したので、その産炭地であるザールラント州でも今後どのようにするか議論されるようになった。結果、ザールラントでの採掘は2012年7月31日まで続けられることが決定された。ところが2008年に炭坑事故が起こり、ザールラント州政府は無期限の採掘中止を発表した。炭坑局は規模を小さくし、それが入っていた建物も閉鎖されることになった。同時にこの建物のその後の利用法について様々なところで話し合われた。そして長い議論を経て、隣接するザール・ギャラリーとともに新しく大きなショッピングセンターに生まれ変わることが決まった。建設費は1億7千万ユーロ。日本円にすると約200億円。その数字だけ見ても巨大なプロジェクトだと分かる。

2008年5月20日に建設工事が始められたが、王立炭坑局の建物外観はそのまま残されることになり、中庭部分やザール・ギャラリーとを結ぶ部分が新たに作られた。完成予定は当初2009年秋ということだったが、それは2010年にまで伸びた。2010年3月3日には建設中のギャラリーの正式名称がヨーロッパ・ギャラリー Europa Galerie というものになった(ドイツ語ではオイローパ・ガレリー)。

ところでこの「ギャラリー」という名称、最近のドイツのショッピングセンターにはよく見られると言うこと。以前は「並木道」を表す「アレー」という単語や「アーケード」というものが多く使われていた。もちろん普通の「ショッピングセンター」というものもあるが、時代の移り変わりによって、そういったことも変化していくのは興味深い。

因みにドイツ初のショッピングセンターは1964年ヘッセン州ズルツバッハ(タウヌス)にオープンした「マイン=タウヌス=センター」で駐車場などを含めた敷地は26万平方メートルあり、ヨーロッパ最大のショッピングセンターだった。実際の商業地面積は79,000平方メートルで、26万という数字に対しては少なく感じられるが、現在ドイツのショッピングセンターの平均的な広さは24,000平方メートルということなので、如何に広いかが分かる。また同年にオープンしたボーフムの「ルール・パーク」も全体面積が126,000平方メートルあって、こちらもその広さが話題になった。

今回ザールブリュッケンにオープンする「ヨーロッパ・ギャラリー」は約25,000平方メートルでドイツの平均よりほんの少し広い。その中に110軒のお店が入る。その建設工事期間中、中央駅前は大きなクレーンや工事車両が数多く見られ、殺風景な風景だった。また王立炭坑局の張りぼてのような壁だけの建物が印象的で、それがどのようなショッピングセンターになるのか楽しみだった。

Europa Galerie オープンの看板「ヨーロッパ・ギャラリー」オープンの数週間前から様々なところでそれに関する広告を目にすることが多くなった(左写真)。そして2010年10月21日(木)、午前9時に「ヨーロッパ・ギャラリー」はオープンした。ここ数日は曇りや雨の日が続いていたが、この日は晴れ間も見られた。一部の店は午前6時からオープンして、また別のお店もカウントダウンがあったということ。

私は午後に出かけてみた。思った以上に人が多い。個人的には文化財保護された王立炭坑局の建物がどのようになっているか興味があった。階段や重要な部屋は当時のままに残してあると言うこと。階段は広くないが、ステンドグラスや格子の模様など、歴史が感じられる建物となっている。更に中に進んでいくと吹き抜けのある大きな空間に出た。そしてこの建物は坂の上に建っているので1階が2つある。下の入り口の一階と上の入口の一階。それぞれ一階1、一階2となっていた。更にその上に2階がある。それにしてもすごい人の数である。予想ではこの日、7万人の来場者数が見込まれていたので、その光景も納得できるものであった。この日の気温は最低3度、最高8度となっていたが、その寒さを感じさせない熱気があった。とにかく人が多い。

カフェも幾つが出来ていたが、何処も人で一杯だった。家に帰ってニュースを見ていると、この日は約9万人が「ヨーロッパ・ギャラリー」を訪れたと言うこと。それだけ期待が高かったのだろう。

新聞などでもこのショッピングセンターのオープンに関する記事が多い。州政府大臣や市長、大学教授などのコメントが紹介されている。喜びや期待のコメントが多かったが、同時に不安や反対記事もあった。というのは、ザールブリュッケンの中心部バーンホフ通りとその先にあるザンクト・ヨハンナー・マルクト(という名の広場)のお店が幾つかギャラリーの中に移転している。人によっては「巨大なプロジェクトではなくて、単なる引っ越しだ」と言っている人もいる。

それによく似た気持ちは多くの人が感じているかもしれない。街のメイン通りのお店が幾つか移転しているが、その分、通りの方は閉店しており少し寂しい雰囲気がある場所もある。街の方が過疎化するかもしれない、友人ともそんなことを話していた。過去には実際にそのようなことがあった。ザールラント州ノインキルヒェンにはザールラント州最大のショッピングセンターである「ザールパーク・センター」がある。面積約33,000平方メートルのところに約120軒入っており、1989年にオープンした。多くの店がここに入った結果、それまで街の中心だったところが寂れたということ。もしかすると今回のザールブリュッケンでも同じようなことになるかもしれない。それを不安に思っている人は少なくないだろう。

しかし「ヨーロッパ・ギャラリー」には、ドイツの他の街にあって始めてザールブリュッケンにオープンするお店も多い。街の人にとっては嬉しいことである。喜びと不安の中でオープンした「ヨーロッパ・ギャラリー」、今後どのように変化していくか、言い換えれば街がどのように変わっていくか楽しみである。


オープン当日のヨーロッパ・ギャラリー

かつて炭坑管理局だった建物

オープン当日のヨーロッパ・ギャラリー


かつて炭坑管理局だった建物

かつて炭坑管理局だった建物

オープン当日のヨーロッパ・ギャラリー

かつて炭坑管理局だった建物

オープン当日のヨーロッパ・ギャラリー

かつての炭坑管理局

かつての炭坑管理局

かつての炭坑管理局

かつての炭坑管理局

オープン当日のヨーロッパ・ギャラリー

カフェの天井、かつての炭坑管理局

オープン当日のヨーロッパ・ギャラリー

カフェの天井、かつての炭坑管理局

かつてのザール・ギャラリー(現ヨーロッパ・ギャラリー)

オープン当日のヨーロッパ・ギャラリー

かつてのザール・ギャラリー(現ヨーロッパ・ギャラリー)

オープン当日のヨーロッパ・ギャラリー

かつてのザール・ギャラリー

かつての炭坑管理局の建物、建設工事中

かつてのザール・ギャラリー


かつての炭坑管理局の建物、建設工事中

かつてのザール・ギャラリーの解体中

かつての炭坑管理局の建物、建設工事中

かつてのザール・ギャラリーの解体中

かつての炭坑管理局の建物、建設工事中


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