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2010年10月11日 オペラ「トゥーランドット」

開演前の劇場ザールラント州立劇場、2010/2011年シーズンのオペラが9月11日(土)に初日を迎えた。演目はジャコモ・プッチーニ(1858-1924)の「トゥーランドット」 (1926年、ミラノ初演)。指揮は同劇場音楽総監督トシユキ・カミオカ(上岡敏之氏)。

初日公演の数週間前にチケットを求めてチケット売り場を訪れると既に完売になっていた。その後も訪れてみたが応えは同じだった。ただ窓口の人が言うには3日前に年間予約で購入したものの来られない人のチケットが戻ってくることがあるので、そのときにもう一度来れば良いと言うことだった。しかし3日前でも状況は同じで、結局2日前にもう一度訪れた時に戻ってきたチケットを購入することが出来た。

初日公演当日の天候は晴れで気温は23度と非常に過ごしやすい。シーズン初日ということもあって、多くの人が正装しており劇場前ではシャンパンやワインを楽しんでいる人が多かった。その天候のように人々の表情も明るい。約2ヶ月間シーズンは休みだったので、この日を楽しみにしていた人も多いに違いない。そして劇場内の当日券売り場では全ての座席カテゴリーで売り切れ表示が出ているにもかかわらず長蛇の列が出来ている。

劇場ホール内は天井シャンデリアの照明が少し落とされているのか既に薄暗く、舞台上では演技が始まっているようだった。そういえば先シーズンに上演されたシューベルト「サコンタラ」でも同じような演出で、観客が喋ったりしながらホールに入ってくるように歌手や合唱の人も喋りながら舞台に入ってきていた。

こういった演出の場合、観客は気持ちを切り替えることなしにそのまま舞台の世界へと引きずり込まれる。その場合、指揮者は既にオケピットにいて直ぐに演奏を始めることが多い。普通は指揮者がピット横から出てきて観客から拍手が起こる。観客はそこで、さあ、これからオペラが始まる、と気持ちの切り替えが出来るのだが、そういった心の準備が出来ていない時に突然演奏が始められると、現実世界とオペラの世界の境目が分かりづらくなる。

劇場内にあった配役表の一部「トゥーランドット」(イタリア語上演、ドイツ語字幕)も照明が落ちたかと思うと突然演奏が始まった。舞台は暗い。結果、この暗さが最後まで続くが、一般的に「トゥーランドット」というイメージから来るような中国的な派手さや色遣いはなく、どこか落ち着いた舞台だった。

公演はその後も完売かそれに近い状態が続いている。公演後の観客も立ち上がって拍手をする人が多いなど、非常に盛り上がる公演となっている。そして観客の拍手が一つになって、文字通り手拍子となる拍手。花束を投げている人もいる。

ところでカミオカの演奏は前音楽総監督の時とは音が随分違っており以前より豊かな演奏になった。この作品は何故かそれが強く感じられる演奏だった。そういえばカラフのアリア「誰も寝てはならぬ」のあと、カミオカはまるで階段を一気に下りていくように音楽を進めたのが印象的だった。ここは音楽が続いている箇所であるが指揮者によってはわざとゆっくりとして、観客がブラヴォーを叫びやすいように、また盛大な拍手をしやすいようにしていると感じる時がある。しかしカミオカはそれによって舞台世界が切れることを拒んでいるのか、一気に次の世界に進んでいった。観客にとっては何処か消化不良のような拍手だったが、その分、公演後のカーテンコールでは盛り上がったのかもしれない。

初日公演後は劇場内でプレミエパーティーがあり、観客も自由に参加することが出来る。ここでは劇場総支配人ダクマー・シュリンクマンが指揮者や歌手陣を皆に紹介していき、その後は立食パーティーとなる。私も参加して日付が変わったころに劇場をあとにしたがその時点でもまだ多くの人が残っていた。何時頃まで続いたのだろうか。

そういえば今シーズンから劇場のホームページの記載が少し変わった。今まではキャストが書かれているだけだったが、今シーズンからは全ての公演日の予定キャストが記載されている。これまではダブルキャストの場合、まず劇場に行ってみないとどちらが歌うか分からなかったので有り難い情報である。

パンフレットとチケットそれによると「トゥーランドット」ではカミオカが指揮しない日もある。ちょうど彼がシェフを務めるヴッパータール交響楽団の日本ツアーの最中なので、その間、第一常任指揮者ヴォルフや同第二のポイシェルが指揮を振る。カミオカはザールラント州立劇場、ザールラント音楽大学、ヴッパータール交響楽団を掛け持ちし、その移動なども大変に違いない。先日のザールラント州立オーケストラによる「マーラー5番」のコンサートの日も日曜日の午前中はザールブリュッケンでシンフォニーコンサートがあり、夜はヴッパータールで本人が弾くピアノのコンサート、翌月曜日はザールブリュッケンでのシンフォニーコンサートと日程的にも大変なことが分かる。

先日引っ越しした私の家(の建物)の管理人がカミオカのファンらしく、いつ彼が指揮を振るか分かれば良いと言っていたが、彼が指揮をするようになってから同じような指揮者の問い合わせも多くなったに違いない。いずれにしてもホームページのこういった記載は他の劇場では当たり前のようになっていることで、ようやくこの劇場でもそういったサービスが始まったのは嬉しいことである。

追記

ザールラント州立劇場のホームページに公演日ごとの配役表が付いたと書いたが、それ以外にオンラインのチケット購入ページもリニューアルされた。本来はもう少し早く公開される予定だったようだが、しばらくの間、不通になっており、その後正式に使えるようになった。今までオンラインでのチケット購入は座席カテゴリーと枚数を選ぶだけだったが、新しくなったページでは座席の場所まで自分で選ぶことが出来る。他の州立劇場では当然のようなサービスだったが、これもようやく他の劇場と同じようになった。

そして「トゥーランドット」の予約状況を見ているとヴォルフやポイシェルが指揮をするときよりもカミオカが指揮をするときの方が客の入りが多い。先日、ヴッパータール交響楽団の日本ツアーから帰ってきて最初のカミオカ指揮の公演は数日前から完売になっていた。その後、彼が指揮をする日はいずれも完売になりそうな気配がある。それだけカミオカの指揮を楽しみにしている人が多いと言うことだろう。ホームページの幾つかのリニューアルもカミオカのおかげと言えるかもしれない。


Turandot

Oper von Giacomo Puccini
Musikalische Leitung: Toshiyuki Kamioka
Inszenierung: Dominik Neuner
Bühnenbild: Hans Dieter Schaal
Kostüme: Marie-Luise Strandt
Choreinstudierung: Jaume Miranda

Turandot: Irina Rindzuner
Altoum: Rupprecht Braun
Timur: Hiroshi Matsui / Jiri Sulzenko
Calaf: Rafael Rojas / Mikhail Agafonov
Liù: Stefanie Krahnenfeld / Izabela Matula
Ping: Guido Baehr / Stefan Röttig
Pang: Algirdas Drevinskas
Pong: Jevgenij Taruntsov
Un Mandarino: Alto Betz / Vadim Volkov

Opernchor, Extrachor und Kinderchor des Saarländischen Staatstheaters


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