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2010年6月4日 雨上がりのドライブ

先日、常日頃からお世話になっているFさん宅でお茶をした。カメラをいじったり写真を見たり、そういったことが話の中心だったように思うが楽しい時間だった。Fさんが撮ったその写真の中に、とある中世のお城跡(ブルク、砦)の写真があった。耳にしたこともないような場所だが、聞けばそれほど遠くないという。外は雨が降っていたが午後7時過ぎ、車でそこに向かうことにした。

城跡5月は雨の日が多かった。普通は「美しい5月」という言葉があるように5月は新緑の時期で、またビアガーデンの時期でもある。それが今年2010年の5月は一日の日照時間が8時間を超えた日が僅か4日しかなかった。4月は8時間以上の日が18日あり、ほとんど晴れていると言った印象だった。また雨の日、一日の降水量が2ミリを超えたのは4月は僅か5日だったのに対し5月は14日と、5月になってから急に天候が悪くなった印象があった。因みに5月の最高気温は6度から27度、最低気温は2度から13度だった。

そのFさん宅でお茶をした日も曇り空で時々雨が降っていた。そんな中だったが、その城跡の写真を見てドライブに出かけたのであった。夏で陽が長く、午後9時頃まではまだ明るいので、午後7時だとまだ夕方にもなっていない明るさだろうか。雨が降っていたが雲の流れが早く、暗くはなかった。車に乗ったときは雨が降っていたが、暫くすると雲の切れ間から陽の光が漏れて、綺麗な斜光となっている。アウトバーン(高速道路)に載り約25分で目的地に着いた。

その城跡は小高い山の上に建つ。麓に駐車してそこから登っていく。しかし途中には近道などもあって約15分ほどで山頂の城跡近くにでる。この頃には雨は止み、空には所々青空が見えていた。雲の流れも速く風が少し冷たい。城跡は想像していたよりも随分広く、雨上がりの空気も綺麗で大きく深呼吸したくなるような場所だった。オレンジ色に染まり始めた傾いた陽の光が、城跡の壁をオレンジ色に染めていく。ここに来て良かった。本当にそのように思われる場所だった。楽しいドライブでFさんには感謝!である。

しかしここまで来るのは少し困難なことがあった。というのは城跡まで続くこの山道にはナメクジがいた。「ナメクジがいた」という一言から想像できる世界ではなかった。一匹、二匹や十匹、二十匹という単位ではない。雨上がりということもあって山道は湿っており、ホラー映画になりそうなほどの数があった。大きさは2センチほどから10センチほどまで様々いる。一見すると丸まった枯れ葉のように見える。黒色や茶色が多い。ドイツ語でナメクジとカタツムリは一般的に同じ単語で「家付き」か「家なし」という違いしかない。その山道には数多くの「家付き」も歩いていた。因みにドイツ語では蝶々と蛾も区別がなく、蛾を見て綺麗と言うドイツ人を見たときは驚いた。

ところでドイツにはコウラクロナメクジという種類が多く、それはオレンジ色で大きさも10センチ以上、太さも3センチ以上になるものがいる。別の街だったが夕方の川沿いにそれが何十匹もいる光景は恐怖そのものだった。ナメクジは植物や野菜にとっても害になることがあり、ドイツでは塩をかける以外にバーナーを使ったり、またビールで駆除することもあるという。それ以外にカモにとっては飲み込みやすいエサということで、ナメクジ退治にカモのレンタルを行うサービスもあるという。

城跡から見た景色その山道を苦労して歩いたこともあって城跡に着いたときには本当に安心した。山道ではずっと下ばかり見てつま先立ちで歩いていた。そういえば途中でドイツ人女性とすれ違ったが、その方は特に下を向くことなく普通に歩いていたので、それほど気にならない光景なのかもしれない。

調べてみると、この城(砦)は1100~1200年頃に対ロートリンゲン公国に対する防壁として築かれたが、1793年にはフランス革命軍によって攻撃され、その後はフランス所有を経てプロイセン所有になったとある。近くを流れる川を監視するにも便利な場所だったのだろう。そして廃墟となっている現在、この城跡では夏には屋外コンサートや映画の上映などもなされており、人が集まる場所になっている。地元の人にとっては馴染みのある場所かも知れない。

それにしても城跡の上から見る景色や雲の流れは見ていて気持ちが良い。雨上がりの少し肌寒い風が既に陽が傾いていることを知らせている。このまま陽が沈むまでこの場所で夕陽を眺めていたい、そのように思われる場所だった。ここだけ時間の流れが違っているようにすら感じられる。下には夕陽に染まった住宅街や誰もいないサッカー場が見える。その静けさがなおさら、ゆっくりとした時の流れを感じさせた。


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