2010年4月12日 SL走る

2010年4月1日から6日まで、その時期はちょうど復活祭の時期だったが、ドイツ南西部では規模の大きな蒸気機関車祭が催された。今年2010年はドイツ鉄道開通175周年の記念として、また蒸気機関車の通常運転再開が計画されてから20周年として、大きな催しが予定されていた。ドイツ南西部、具体的にはザールラント州やラインラント=プファルツ州で蒸気機関車(SL)や歴史的なディーゼル車、電気機関車、貨物など、その数は約200台が走るという。4月1日にはラインラント=プファルツ州トリアーで州の経済・交通大臣が出席し、開会式典が催された。2日から6日までは蒸気機関車などが走り、後日の報道によると10万人以上が参加したと言うこと。

蒸気機関車などが走る路線は、ザールブリュッケン=トリアー間、トリアー=コプレンツ間、ザールブルク=コッヘム間、トリアー=ルクセンブルク間など幾つかの路線がある。しかしそれらは在来線を走るので一日数本となっている。それらの列車に乗ることも可能で一回券や一日券など複数の種類のチケットが用意されていた(8ユーロから150ユーロまで)。

自分はそういった列車に乗るのではなく、写真を撮ろうと時刻表を調べてみた。ザールブリュッケン=トリアー間の列車は4月3日(土)から5日(月)の3日間で、蒸気機関車1日4往復、電気機関車1往復となっている。撮影できる場所はそれほど多くない。思い浮かんだ場所に行ってみたが、ザールブリュッケン中央駅に向かう列車は、いつ来るか全く見えないので、ザールブリュッケン中央駅発の蒸気機関車を撮ることにした。

天候は曇りもしくは雨だったので、雨の日は諦め曇りの日に行った(結果的に撮影機会は2度だった)。同じことを考えている人がいるようで、その場には10数人の人がいた。カメラやビデオを構えている人、単に見に来た人などがいるが、写真を撮っている人は女性が多いのが印象的だった。鉄道写真を趣味にしている人が多いと色々なところで目にしていたが、どうやらそれも間違っていないよう。

出発予定時刻の10分ほど前に駅近くのその場所に着いたが、その時点で遠くには少し白煙が見えていた。暫くすると大きな汽笛が遠くから聞こえ、白煙がモクモクと上がり始めたのが見えた。その白煙が風に流されていく。ザールブリュッケン=トリアー間を走る蒸気機関車はドイツ国鉄01形蒸気機関車と呼ばれるもので、一つは「01 118」(1934年製造、最高時速130キロ)、もう一つは「01 509」(1935年製造、最高時速130キロ)というものだった。

そのままその白煙を見ていると、蒸気機関車が近づいてくるのが見える。そのあとに音がやって来るといった感覚だ。蒸気機関車ならではの蒸気の音と鉄道の重量感ある音が近づいてくる。しかし線路まで距離があるからか思ったほどには迫力がない。と思っていたら汽笛を鳴らすと迫力が感じられ、同時に風情が感じられる。

ところで写真は流し撮りをしようと考えていた(流し撮りとは移動する被写体を追いかけるようにカメラを振りながら撮影すること)。練習無しの本番といった感じだったが、蒸気機関車の走りを楽しみながら撮影することが出来た。横では小さな子供(おそらく孫)に見せようと年配の方が、子供と一緒に走る列車に向かって手を振っている。世代によっては列車やこの音は懐かしさがあるものだろう。

今年でドイツ鉄道175周年と書いたが、ドイツ初の鉄道は1835年12月7日、ニュルンベルクとフュルト間を走ったバイエルン王国のルートヴィヒ鉄道だった。当時は轟音を立てて走る蒸気機関車に恐怖を抱いた人も多かったという。それまで馬車が一般的だった時代に、こういった大きな音を出す乗り物に恐怖を感じる人がいるのは当然のことかも知れない。その後、蒸気機関車は交通面だけでなく産業面にも大きく貢献した。

そういえば以前、2003年、バイエルン王立鉄道100周年の際に運転された蒸気機関車に乗ったことがある(パージング=ヘルシング間)。車両内で聞く汽笛の音の大きさも大きいと感じたが、最も印象に残ったのは他の蒸気機関車とすれ違うときだった。そのすれ違うときに他方の蒸気機関車の力強さ、重厚さ、凄みのある迫力など上手く説明出来ないが非常に大きな威圧感を感じた。蒸気機関車の開発は技術力を示すことはもちろん国家の威厳さえも代弁しているのだろう。その威圧感からはそんなことが感じられた。

今回の蒸気機関車祭で走る車両一覧にある写真や資料などを見ていると、今回のイベントは単に過去の乗り物を懐かしむだけでなく、そういった過去の威厳や競争にまで思いが及び、同時に未来をも見ているようにも思われる。そういったことを意識し、汽笛を響かせて走る蒸気機関車を見ていると、それがさらに重厚感あるものに感じられた。


遠くに白煙だけが見えている

蒸気機関車が見えた

遠くに白煙だけが見えている


蒸気機関車が見えた

白煙を上げて近づく蒸気機関車

汽笛を響かせて前を通りすぎる蒸気機関車「01 118」

白煙を上げて近づく蒸気機関車

汽笛を響かせて前を通りすぎる蒸気機関車「01 118」

窓から顔を出す人

通り過ぎていった蒸気機関車

窓から顔を出す人

通り過ぎていった蒸気機関車

近づいてくる蒸気機関車

前を通り過ぎる蒸気機関車「01 509」

近づいてくる蒸気機関車

前を通り過ぎる蒸気機関車「01 509」

運転席

蒸気機関車を見る(撮る、録る)人たち

運転席

蒸気機関車を見る(撮る、録る)人たち


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