Homeザールブリュッケンでの日記 > 「ヒトラーの犯罪」展

2010年3月11日 「ヒトラーの犯罪」展

ポスターかつてドイツ騎士団学校として利用されていた建物(1868-1871年建設)、それは後に旧消防署の倉庫として利用されていたが、2009年11月末からの改修工事によって市立古文書館として生まれ変わった。2010年1月29日に開館したこの施設はザールラント州で初めての専門的な古文書館で、市長が出席してその開館が祝された。

そしてその中の展示室で2月2日(火)から3月5日(金)まで「記憶と和解 - ヒトラーの犯罪 - Erinnern und versöhnen – Hitlers Verbrechen」と題された展示が催された。展示品はバーデン=ヴュルテンベルク州の州立古文書館所蔵のもので、この地は第二次世界大戦以後フランスによって占領されていた場所だった(1952年当時の西ドイツに加盟)。元々この展示は1945年6月パリを始めフランス各地でなされたもので、ドイツ人が如何にナチスに傾倒していったか、ナチスはどのような政策を行ったか、フランスで彼らは何を行ったか示すものだった。それに加えて大戦後、その地がどのようにしてナチス政策から脱却したか、平和のために何を行ったか、そういったことに関する展示であった。

戦後ザールラントはザールゲビート(ザール地域)としてフランス影響下の自治国的な位置づけにあったが、これらの展示はその当時の1946年3月15日から1946年4月7日までザールブリュッケンのザールラント美術館でも展示されたものだった。

市立古文書館を訪れると、展示室だけでなく建物入り口にポスターや資料が並べられてあり、また廊下にも僅かながら展示がなされてあった。訪れたときは他に人がいなかったが、どれほどの人が見に来ているのだろう。展示は写真付きで紹介され、分かりやすい展示となっているが、それがナチスの凶暴性などを視覚的に訴えるものとなっている。

展示室展示には現在のバーデン=ヴュルテンベルク州の状況も説明されてあった。この地がかつてフランス占領下にあったと書いたが、その後の和解について説明があり、バーデン=ヴュルテンベルク州の街がフランスの街と姉妹都市提携を結んでいることに関して説明があった。その自治体の数は431市町村あるという。それが州のどれほどの割合かは記載されていなかったが、いずれにしてもすごい数である。バーデン=ヴュルテンベルク州の多くの街がフランスの街と姉妹提携を結ぶのは、戦後ドイツの国際的な和解策の一つかも知れない。

この展示からは当時のフランスが如何にドイツを危険に思っていたか、そこにフランスの将来に対する不安があるなど、当時のことが垣間見られる。そして今現在ザールブリュッケンの市立古文書館の開館イベントとして、この展示がなされるのは非常に興味深い。街にとって第三帝国はそれだけ重要な位置を占めているとも言える。独仏国境の街としての責任や課題を見いだす一つのイベントと言えるだろう。

先日、市立図書館では「No! ヒトラー」展が開催されていた。第三帝国に関する展示が重なったのは偶然かどうかは分からないが、いずれにしてもザールラントが第三帝国の時代やそこから見いだせる何かを求めているのかも知れない。ザールブリュッケンは現在ザール・ロア・ルクス(ドイツ・ザールラント州、フランス・ロートリンゲン地方、ルクセンブルク)地方の文化的・政治的中心地としての位置づけを意識しているが、こういった展示は将来のザールラントを意識する一つの機会になることは間違いないだろう。


市立古文書館

新聞

市立古文書館

1946年にザールブリュッケンで開催された際の新聞


▲ページの最初に戻る