2009年10月2日 2ユーロ硬貨

2ユーロ硬貨先日、買い物をしたときのお釣りで変わった2ユーロ硬貨を手にした。ユーロは2002年にEU(欧州連合)加盟国の中で導入された通貨である。EUは2009年10月現在27カ国の加盟があり、その中の16カ国が法定通貨としてユーロを導入している(EU加盟国以外でも使われており、現在は22カ国で使われている)。そのユーロの通貨(1セントから2ユーロ硬貨まで8種類)、それぞれの額面側はヨーロッパの地図が描かれ共通のデザイン(ベルギー王立造幣局によるデザイン)となっているが、反対の面は各国独自のデザインを持っている。それ故、各国のコインを集める収集家もいるという話を何度か耳にしたことがある。

そういえばユーロの導入は2002年だが、それぞれのコインを見てみると、中には1999年というものまである。これは一般的に流通はしていないが、この年から決済通貨として造幣されていたことに由来する。また2004年にEUが拡大したのを機に2007年以降、1セント、2セント、5セント以外のデザインが変更された。

2002年にユーロが導入された際、今思えば生活レベルでは大きな混乱はなかったように思われる。しかし新しいユーロ通貨がまだ多く出回っていないときに、お店でもらったお釣りに別の国の既に使われなくなった硬貨が混じっていたという話も耳にした。またドイツではそれまでの通貨ドイツ・マルクとの交換比率がおおよそユーロ:マルク=1:2といった感じだったので、それまでは例えば100マルクだったものが、ある日から50ユーロになると、意識的には半額になった気分になる。それ故、安くなった印象からこれまで以上に多くの買い物をしたという人までいた。このときは表記の切り替え費用などで物価が上がり、ユーロは高いという印象が市民にはあった。それで「高価な」を意味する「teuer」と「ユーロ Euro」をくっつけて「Teuro(トイロ)と言う造語が生まれ、2002年、「その年の言葉」にも選ばれた。

そういえば以前はスーパーなどでユーロとマルクが並記されてあったが、同年2月末までの移行期間が過ぎて暫くするとユーロだけになり、その当時は頭の中でマルク換算したものだった。いつしかそれもしなくなり、今ではドイツ・マルクなど存在していなかったかのようになっている。そのようにして過去幾つもの通貨が消えていったのだろう(ドイツでは1871年のドイツ統一後、ユーロ導入まで、金マルク、レンテンマルク、ライヒスマルク、ドイツ・マルク、東ドイツマルクがあった)。

因みに現在ドイツでドイツ・マルクは流通していないが、連邦銀行に持っていけば交換してもらえると言うこと。それ以外にお店によって特別にマルクが使える日というものがある。おそらくそれだけマルクを残している人も多いのだろう。整理をしていて見つけたという人もいれば、当時の思い出・記念として残していた人もいるかも知れない。

ところで、冒頭に書いた変わったデザインの2ユーロ硬貨、これはEUの経済通貨統合10周年を記念して発行されたというもの。一見すると子供の落書きのように見えたので、思わず誰かがコインにいたずらをしたのかと思ってしまった。

2ユーロ硬貨また同じく上で書いた文章に、ユーロ硬貨のデザインは各国によってデザインが違うと書いた。ドイツは基本的にドイツの国章である鷲の紋章が描かれているが、2006年以降ドイツ連邦のそれぞれの州が描かれるシリーズコインが発行された。2006年はシュレスヴィヒ=ホルシュタイン州リューベックにあるホルステン門、2007年はメクレンブルク=フォアポンメルン州のシュヴェリン城など、毎年一州ずつ、16年かけて16州の2ユーロ硬貨が登場する。2012年にはバイエルン州のノイシュヴァンシュタイン城が登場するが、観光客に非常に馴染みのある場所がデザインされているので、お土産として持って帰る人も多くなるかも知れない。

その州シリーズコインで2009年はザールラント州だった。描かれたモチーフはザールブリュッケンのルートヴィヒ教会。ザールブリュッケンに住む人ならば是非手元に置いておきたい、そう思う人が多いのかどうかは分からないが、目にする機会は少ないように思われる。

そのルートヴィヒ教会がデザインされたコインには右上に「FB」という文字が入っているが、これはこのコインをデザインしたデザイナー、フリートリヒ・ブレンナーという人物のイニシャルということ。またドイツの硬貨には「A」や「D」など文字が入っている。これは造幣局の場所(5カ所)を示すもので、現在は「A」がベルリン、「D」ミュンヘン、「F」シュトゥットガルト、「G」カールスルーエ、「J」ハンブルクとなっている。もともとは別のアルファベットもあった。これは1871年ドイツ帝国成立時に定められた貨幣鋳造法に基づいている。帝国がそれぞれの国家や州にそれぞれアルファベットを与えた。例えば当時、「C」はフランクフルト・アム・マイン、「E」はドレスデン、「H」はダルムシュタットなど。また「P」というものもあり、これはパリだった。ザールラント用に作っていたということ。

コインから紐解いていく歴史、それもまた面白いものかも知れない。


記念2ユーロ硬貨

新旧2ユーロ硬貨

2007年に発行された記念2ユーロ硬貨
欧州経済共同体設立などを決めたローマ条約調印50周年を記念して、
ユーロを導入していたEU加盟国で発行された

新旧の2ユーロ硬貨
左が1999-2006年、右が2007年以降
国境線のあり無しを含め、地図の描かれ方が違っている

ドイツの州シリーズコイン

ドイツの州シリーズコイン

ドイツの州シリーズコイン

ドイツの州シリーズコイン
ザールブリュッケンのルートヴィヒ教会が描かれたもの

縁面

ザールラント州のコインがデザインされた袋

ドイツの2ユーロ硬貨
縁面にはドイツ国歌の一小節目
"EINIGKEIT UND RECHT UND FREIHEIT"が掘られている

ザールラント州のコインがデザインされた袋
ドイツ再統一記念日の市民フェストにおける
連邦財務省に関する展示で配られていたもの


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