Home > ザールブリュッケンでの日記 > オペラ「サロメ」
デヴィット・オールデンというアメリカ人演出家がいる。彼は現在のドイツ・オペラ界では成功している演出家の一人だろう。特にペーター・ヨーナス卿が劇場総支配人を務めていたバイエルン州立歌劇場では、ヘンデルを中心としたバロックやリヒャルト・ヴァーグナー「リング」シリーズなど様々な演目で演出をした。
彼による演出は好みが分かれるだろう。というのは、彼の手がけた作品の多くはオペラの時代背景や人物設定などを無視したと思われるようなものが多い。そして伝統や格式を取り払い、娯楽的な演出になっていることが多い。本来オペラが持つ世界観などから想像するものを予想して、彼の手がけたオペラを観ると裏切られたと思うことがある。しかし人によってはそのギャップが面白いという。それ故に人気があるのだろう。
2009年6月7日(日)にザールラント州立劇場でプレミエ(初演)を迎えたリヒャルト・シュトラウス(1864-1949)作曲のオペラ「サロメ」(1905年ドレスデンにて初演)のカーテンコールの際、歌手や指揮者のあとに、演出家や衣装担当の人が舞台に出てきたとき、その中にデヴィット・オールデンがいるのを見つけた。
そんなはずはない。その名前なら配役表を見たときに気が付いたはずである。思わず手にしていたパンフレットを読んでみた。演出はクリストファー・オールデンとあった。しかし彼の紹介文を読んでみると、そこにはデヴィット・オールデンは双子の兄弟と紹介されてあった。双子だからかそっくりな外見だ。
舞台上に姿を現したときに出るブーイングの多さも非常によく似ている。といっても自身はクリストファー・オールデンの手がける作品を観たのは今回が初めてなので、簡単には評価することが出来ない。ただシンプルな舞台セットや一見しただけでは意味が理解できない人物の動きなど、一度では理解できない印象だった。
今回のプレミエ公演、カーテンコールの際に歌手陣が出てきたときには大きな拍手とブラヴォーがあり、中でも指揮者コンスタンティン・トリンクスが舞台に姿を現したときには、それにもまして大きなブラヴォーが飛んでいた。非常に濃厚で官能的な演奏だった。その反面、演出家にブーイングが飛んでいたのは、有名な「サロメの踊り」だろう。官能とはほど遠いものだった。それでも演出家が笑顔だったのは、彼ならではの作戦が当たったのかも知れない。それを意識すると演奏と演出ではズレのある作品と言えるかも知れない。
このサロメ、来シーズンの再演が決定している。指揮者トリンクスは来シーズンよりダルムシュタット歌劇場の音楽総監督に就任するので、ザールラント州立劇場での再演ではおそらく別の指揮者が振るだろう。また違った「サロメ」を聴けるかも知れない。今から楽しみである。
配役
Salome
Oper von Richard Strauss
Text und Musik von Richard Strauss (nach dem Drama von Oscar Wilde)
Musikalische Leitung: Constantin Trinks
Inszenierung: Christopher Alden
Bühnenbild: Charles Edwards
Kostüme: Doey Lüthi
Dramaturgie: Berthold Schneider
Herodes Rudolf Schasching
Herodias Maria Pawlus
Salome Gun-Brit Barkmin
Jochanaan Olafur Sigurdarson
Narraboth Jevgenij Taruntsov
Page Judith Braun
1. Jude Algirdas Drevinskas
2. Jude Michael Müller
3. Jude Sang Man Lee
4. Jude Jaeil Kim
5. Jude Markus Jaursch
1. Nazarener Jirí Sulženko
2. Nazarener Manfred Rammel
1. Soldat Hiroshi Matsui
2. Soldat Jeoung-Su Seo
Ein Cappadocier Johannes Bisenius
Ein Sklave Manfred Rammel