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2009年3月10日 オペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ / 道化師」

ピエトロ・マスカーニ(1863-1945)の「カヴァレリア・ルスティカーナ」(1890年ローマにて初演)とルッジェーロ・レオンカヴァッロ(1857-1919)の「道化師」(1892年ミラノにて初演)は前者が一幕オペラ(約70分)で、後者が二幕だが時間もそれほど長くない(約85分)ことから、現在は同時に上演されることが多い。ザールラント州立劇場(イタリア語上演、ドイツ語字幕)の場合もそうだった。

初日公演前の劇場同作品が2009年2月1日、ザールラント州立劇場で初日を迎えた。指揮はザールラント州立劇場暫定音楽総監督のコンスタンティン・トリンクス。客席には初日独特の期待感が拡がっていた。トリンクスの指揮は他の作品でも見られるように、重箱の隅をつつくような丁寧な演奏をする。この日もそうだった。

前奏曲の間、緞帳は閉められ、観客はその美しい前奏曲に浸ることが出来た。しかし前奏曲が終わり幕が開いて、明かりの照らされた舞台が見えると、少なくとも自分は、そのセットを見て少し残念な印象を得た。舞台設定は1920年代、もしくは30年代のよう。舞台の枠が門のようになっており、そこにヴィットーリオ・エマヌエーレ3世やムッソリーニといった碑文がある。そこで映画撮影している設定になっている。

この作品の演出はインガ・レヴァント。彼女はこれまで、この劇場で「クレルヴォ」や「カルメン」を演出している。写実的な描写で、舞台セットなども分かりやすい。言い換えれば、それだけ見やすい舞台だと言える。今回の「カヴァレリア・ルスティカーナ」「道化師」は同じ人物が演出しているので、コンセプト的にも統一感がある。前者が1920、30年代で、後者がその50年後という設定になっており、「道化師」の舞台は少しポップな印象を与えている。

パンフレットとチケット舞台セットなどは、ストーリー的にも上手く作られている気もしたが、ただそのストーリーを意識するあまり、音楽とは合っていない演出のように思えた。もしかすると、合っていないだけでなく、音楽を無視してしまっているかも知れない。舞台と音楽の一体感のない作品、今回の作品はそのように感じられた。

歌手陣は皆、存在感があり上手く歌っている。それを示すように公演後の挨拶では大きなブラヴォーが飛んでいたが、演出家たちが舞台に出てきたときには、特に大きな拍手や歓声もなかった。もしかすると、これがオペラではなく、演劇として観るならば、非常に良くできた作品と言えるかも知れない。

この2作品は、ヴェリズモ・オペラという範疇に属する。これは1890年代から1900年代初頭にかけて、イタリアで興ったもので、現実主義的なヴェリズモ文学の影響を受けている。つまり庶民的な日常を題材にしている。それを意識すると今回の演出はより演劇的になっていると感じられる。

今シーズン、数回、この作品を観ることが出来たが、いずれも音楽と舞台が合っていないような印象を抱いた。オペラという点では、それは残念なことかも知れないが、それを意識せず、人間模様など一つの舞台として観るならば楽しめる作品かも知れない。




配役

Cavalleria Rusticana / Der Bajazzo

CAVALLERIA RUSTICANA
Oper von Pietro Mascagni, Text von Giovanni Tragioni-Tozzetti und Guido Menasci
DER BAJAZZO
Oper von Ruggero Leoncavallo, Text vom Komponisten

Musikalische Leitung: Constantin Trinks
Inszenierung: Inga Levant
Bühnenbild und Kostüme: Friedrich Eggert
Choreinstudierung: Pablo Assante
Dramaturgie: Berthold Schneider

CAVALLERIA RUSTICANA
Santuzza: Dubravka Musovic
Turiddu: Luis Chapa/Rafael Rojas
Lucia: Elena Kochukova/Maria Pawlus
Alfio: Olafur Sigurdarson
Lola: Judith Braun/Sofia Fomina
Regista: Gaetano Franzese

DER BAJAZZO
Canio/Pagliaccio: Luis Chapa/Rafael Rojas
Nedda/Colombina: Stefanie Krahnenfeld/Christina Niessen
Tonio/Taddeo: Olafur Sigurdarson
Peppe/Arlecchino: Rupprecht Braun
Silvio: Guido Baehr/Stefan Röttig
Zwei Bauern: Changyu Lim/Vladimir Makarov, Antoniy Ganev/ Sung-Woo Kim


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