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2008年10月30日 ミュージカル「リング」

関係者のみの公演日ミュージカル「リング」がザールラント州立劇場で10月23日(木)に初演を迎えた。この作品はドイツを代表するオペラ歌手ジークムント・ニムスゲルン(1940-)の息子であるフランク・ニムスゲルン(1969-)作曲によるものである。ザールブリュッケン出身の彼の作品はこれまでも上演されることがあり、また地元と密接な関係があるからか、初日公演は関係者のみの公演だった。その翌日に一般的な初日を迎えたが、関係者のみの日は、入り口に赤絨毯が敷かれ、また劇場も赤色でライトアップされるなど、普段とは違った光景が見られた。

ところで音楽で「リング」と言えばリヒャルト・ヴァーグナー(1813-1883)の「ニーベルングの指環」が思い浮かぶ。パンフレットなどを見ていると役名などは、大体それと同じである。このニムスゲルンの「リング」は昨シーズン、ドイツ・ボンで初演され大成功を収めたと言うこと。今回のザールラント州立劇場での公演は、ボン劇場の引っ越し公演である。ミュージカルで聴きやすいといこともあってか、どの公演もチケットがよく売れているという。自分は一度、観る機会に恵まれたが、どことなくリヒャルト・ヴァーグナーをイメージしていたためか、ミュージカルを観たときに、全くの別作品と言う印象が強く残った。

音楽的には、バンド演奏によるロックやポップス系だった。その中にリヒャルト・ヴァーグナー「神々の黄昏」のごく一部が使われているだけで、それ以外はヴァーグナーとは全く違った音楽だった。またミュージカルなので、歌手陣もマイクを使っている。スピーカーから大音量の音楽が流れ、その中でダンサーが踊り、歌手が歌う。一度観ただけなので、あくまで感覚的だが、あっけなく終わりを迎えた内容のように思えた。ミュージカルだから、それで良いのだろうか。それとも自分の中に「ニーベルングの指環」の長大さのイメージが無意識にあるのだろうか(ヴァーグナーの作品は約15時間)。

公演の日、劇場前にいる人たちの客層を見ると、年配の人に比べ若い人たちが非常に多い。分かりやすいストーリーや大音量の演奏など、どちらかと言えば若い人たちに受けいれられる作品なのだろう。そういえば関係者のみの公演日、劇場前はスーツ姿の人が多く、別の日の公演とは明らかに雰囲気が違っていた。そういった人たちはどのような感想を抱いたのか興味がある。

ところで、リヒャルト・ヴァーグナーの最大の支援者はバイエルン王ルートヴィヒ1世2世(1845-1886)であったが、彼は作品の美に対しても意識があり、リヒャルト・ヴァーグナーやそれを上演する人たちにもそれを求めた。それ故、歌手の容姿に拘ったという話もあるが、今回のミュージカル「リング」の歌手陣ならば、細身の人が多く、これならば王も満足したのではないだろうか、そんなことを思いながら舞台を見た。


Der Ring - Das Musical

von Frank Nimsgern
Texte: Daniel Call

Ab Donnerstag, 23. Oktober 2008 im Staatstheater

Musikalische Leitung: Frank Nimsgern
Inszenierung: Christian von Götz
Bühnenbild: Heinz Hauser
Kostüme: Gabriele Jaenecke

Gastspiel des Theaters Bonn


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