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2008年5月31日 Mouvement-Festival fuer Neue Musik

市立ギャラリー2008年5月29日(木)から6月1(日)まで市内で「Mouvement-Festival fuer Neue Musik」というイヴェントが催された。新しい音楽(現代音楽)のためのフェスティバルで「Klang-Kalligraphie」(直訳では「響き-書道」の意、「音で聴くカリグラフィー」)をタイトルにして、コンポーザー・イン・レジデンスにToshio Hosokawa(細川俊夫氏、1955-)を迎えている。具体的な場所は、ザールラント音楽大学、市立ギャラリー、ザールラント放送局のあるハルベルクのホール、コングレスハレ(会議場ホール)、ヨハンネス教会などでコンサートや講演など、8つのイヴェントが催される。

5月30日(金)、「Klang-Zeichen」という催しがあったので開催場所である市立ギャラリーに向かった。ところで前日は夜遅くまで雷が鳴り響くGewitterゲヴィッターと呼ばれる天候で、翌日の天気予報も雷を伴った予想になっていた。当日、外に出てみると、曇り空で、また湿度も高い。しかしオープンカフェに座る人たちの笑い声などが響き、どこか夏らしい雰囲気が街中に拡がっていた。

開演5分ほど前に市立ギャラリーに到着。その前にはザールラント放送局の車が止まっている。そして市立ギャラリーのある2階へと上がった。人の話し声が聞こえる。おそらく演奏会を聴きに来た人たちのものだろう。

市立ギャラリーその演奏会が行われる場所、それは二つの部屋のしきりを取った感じの空間だが、中に入ってみると既にそこは人で一杯で、新たに椅子を並べているところだった。おそらく50人ほどの予想だったのだろう。開演頃には70人前後の人たちがおり、中に入れない人たちは入り口のところで立っている。日本人作曲家の演奏だからか、客席の中には日本人の姿も見られた。

暫くして窓を閉め始めた。それまで部屋に入ってきていた冷たい風と外の音が止み、それがこれから何かが始まると言った合図になった。落ち着いて空間を見まわしてみると白い天井に白い床、白い遮光カーテンとその白い空間は建物外観の白いバロック様式と相まって見える。そしてその白い壁には書道家Masanori Takiの作品が15枚掲げられてあった。今回の展示は全部で26枚。残りの11枚はザールラント放送局のあるハルベルクの建物に展示されていると言うことだった。

17時の開演予定を少し回ってから、演奏者の二人が拍手で迎えられた。琴のMakiko Gotoと尺八のWolfgang Hesslerである。前者は涼しげな夏を感じさせる水色の着物で、後者はいかにも尺八奏者といったような黒色の和装だった。ステージは床の上に敷かれた赤い絨毯だ。それを取り囲むように椅子が並んでいる。演奏者は観客の目線から下の位置になり、もしかすると演奏しづらいのではないかという気がする。

パンフレット暫くして琴の演奏が始まった。客席の最前列にいる人たちにとっては問題ないが、後ろの列になると、その演奏姿を捉えることは難しい。なので中腰になっている人や人と人の隙間から腰を曲げて覗き込む人の姿が印象に残った。ところで閉めきった空間の中での演奏というだけでなく、大きなテレビカメラが入り、その撮影のための強い照明など、演奏者にとっては大変な状況だったかも知れない。ましてや着物を着ての演奏。一曲弾き終えたときには汗が光っていた(その後は黒のドレスに着替えられていた)。

途中、Toshio Hosokawa、Masanori Taki、両氏の挨拶があった。彼らが武生国際音楽祭で知り合ったこと、展示されている書道のこと。それらの簡単な説明があって、演奏が続けられた。今回の演奏会で、自分は、ゆっくりとその書道を見る時間がなかったのが残念だった。出来れば演奏家の後ろにも作品が掲げてあれば、「音で聴くカリグラフィー」をより意識できたのではないかと思われる。しかしいずれにしても、そういった書道のある空間で琴や尺八の演奏というのは一つの独特な「和」的な空間を作りあげている。

公演後に頂いたケーキただ時々、窓の外の音、例えばオープンカフェでお茶をする人たちの笑い声だったり、また路上で演奏しているクラリネットの音だったり、それらがその「和」の空間を乱すことがあった。そういった中での演奏者の真剣な演奏はこちらまで伝わってくる。息づかいなども直に伝わる距離での演奏はやはり緊張感があって良い。

演奏会は約一時間で終わりになった。そういった中での演奏で拍手も大きかった。そういえば以前、ドイツの別の街でToshio Hosokawaの音楽を聴いた。世界初演のクリスマス・カンタータだったが、演奏後、大きな拍手が出ていた。そのときの作曲家の表情が印象に残っている。

ところでこの日は19時から音楽大学で、22時からヨハンネス教会でのさらなる催しがある。関係者にとっては忙しい一日だろう。17時からの演奏が終わって、自分はそのまま市立ギャラリーの下にあるカフェで休むことにした。周りを見ると、同じように演奏を聴いていた人たちの姿があった。パンフレットや公演案内を手にしている人がいる。残念ながら自分はこの演奏会しか聴くことが出来なかったが、こういった音と視覚を使った公演は大きな説得力があり、より作品が心に届きやすくなる。そう感じた演奏会だった。


Klang-Zeichen

Freitag, 30. Mai, 17.00 Uhr, Stadtgalerie Saarbrücken

Traditionelle und neue Musik für Koto (japanische Zither) und Shakuhachi (japanische Bambusflöte) vor der Kulisse kalligraphischer Werke von Meister Masanori Taki

Makiko Goto, Koto | Wolfgang Hessler, ShakuhachiKrngyo Yatsuhashi „Hachi-Dan“ für Koto Solo „Shakuhachi-Honkyoku“ für Shakuhachi Solo Gerhard Stäbler „Ithaka“ für 13saitige Koto (und Stimme) (2003) „Shakuhachi-Honkyoku“ für Shakuhachi SoloToshio Hosokawa „Koto-Uta“ für Gesang und Koto (1999)


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