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2008年1月8日 「州立オーケストラ・シンフォニーコンサート4」

2008年1月7日(月曜日)、小雨の降る寒い日だった。その日、ザールブリュッケンの会議ホール(コングレスハレCongresshalle)でザールラント州立オーケストラの第4回シンフォニー・コンサートがあった。

このホールは、ザールラント州立オーケストラだけでなく、ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団ザールブリュッケン・カイザースラウテルン(Deutsche Radio Philharmonie Saarbrücken Kaiserslautern、以前のザールブリュッケン放送交響楽団)がコンサートをする場所で、ザールラント州で最も音の良いホールの一つとされる。ドイツ放送の方は昨年11月のコンサートでスタニスワフ・スクロヴァチェフスキの指揮により彼自身の作品を世界初演した。

そのホールで州立オーケストラのコンサートがある。指揮はヴォルフ=ディーター・ハウシルト、ピアノがゲルハルト・オピッツ。作品はブラームスの交響曲第3番ヘ長調作品90、グリークのピアノ協奏曲イ短調作品16、ハイドンの交響曲第100番と馴染みのある作品が並んでいる。

開演少し前にホールに着いたが、その日は雨だったせいか、クロークでコートだけでなく傘を預ける人もいて、自分もコートを預けるのに少し並ばなければならなかった。その後ホール入り口でプログラムを購入して自分の席を探した。自身にとっては初めてのホールなので、オピッツの演奏だけでなく、ホールを訪れることも楽しみだった。客席数は最大で約1800とあるが、舞台の大きさを変えることで収容人数なども変わってくるよう。舞台横などは客を入れていなかったので、おそらく1200人ほどだろう。

プログラムとチケット自分の席は前から10列目の中央左より。後方などは確認できなかったが、ほぼ完売といった状態だった。そして午後8時過ぎにコンサートが始まった。舞台袖から指揮者が現れ、客席から拍手が起こる。

ブラームスが始まった。しかし自分は一瞬戸惑ってしまった。というのは何故かオーケストラの音がよく聞こえない。正確には何か舞台と客席の間に目に見えない壁があるような感じだった。音の繊細さがなく、空気がよどんでいるといった感じだろうか。原因は全く分からない。コンサートが始まるまで、周りの音も普通に聞こえていた。結局、そのままブラームスが終わってしまった。

続いて、ピアノが中央に置かれ、そして指揮者ハウシルトとピアニストのオピッツが舞台に現れた。観客も期待に満ちた拍手で彼らを迎える。ところでハウシルトとオピッツの二人は背丈も同じほどで、また同じような雰囲気を持っているように感じられた。背中もよく似ている。

指揮者とピアニストが目と目で合図をする。二人だけの世界といった感じだ。観客は静まりかえっている。それに対し、オピッツの体が動いている。演奏が始まった。が、耳に届く音はまたしても曇ったままだった。しかしその状況でも自分は無意識に音楽に集中していった。彼の演奏は凄味を持って弾いているような感じはない。何処か少し力を抜いているようにも見える。しかしオピッツ一人でオーケストラを演奏しているような、ピアノの多彩な音が耳に届いてくる。といってもオーケストラと対決するのではなく、オーケストラの音が更に深みを増すように感じられる。ピアノという一つの楽器だけで、これほどの音が出ることに、そしてオピッツのその表現力に息を呑むといった感じだった。これで耳に届く音がもっと良ければ!と考えていると、いつしか演奏が終わってしまった。

音の余韻を楽しむことが出来なかった。本当にすごい拍手とブラヴォー。ダムが一気に決壊したような歓声があった。客席から大きな声が飛び、床を蹴っている人たちもいる。オピッツは客席全体を見まわしてから頭を下げて舞台袖に戻ったが、それでも拍手とブラヴォーはなりやまず、結局、彼は5度も舞台に姿を見せることになった。そしてコンサートは休憩になったが、休憩中も興奮している人の姿が見られた。

後半はハイドンである。開始のベルが鳴り、自分の席に着くと、前方に幾つか空席があった。前半だけ聴いて帰った人がいるのだろう。そして後半。交響曲第100番は「軍隊」とも呼ばれるが、それを意識してかオーケストラの打楽器の人たちが19世紀の軍隊風の格好をしている。演奏が始まった。自分はまたしても戸惑ってしまった。今度は音が非常に良いのである。それぞれの楽器の音がくっきりと聞こえる。何故だろう。休憩中にホールの空気が入れ替わったせいだろうか。前半からこの状況だったら、とも思ったが、生演奏なのでそう言ったこともあるだろう。

生演奏と言えば、このハイドンの最中に打楽器の人が上段から、楽器を床に落としてしまった。衣装が目立つだけに、人の視線も集まりやすい。それがなおさら派手な音楽を演出したようにも思われる。今回のコンサートは最初から最後まで、CDなどでは楽しむことが出来ない、生演奏ならではのものであった。ミスなどもあったりするが、この臨場感などが生演奏の素晴らしさだろう。コンサートが終って外に出ると、少し風が吹いていたが、冷たい雨は止んでいた。


4. Sinfoniekonzer

ohannes Brahms: Sinfonie Nr. 3 F-Dur op. 90
Edvard Grieg: Klavierkonzert a-Moll op. 16
Joseph Haydn: Sinfonie G-Dur Hob. I:100 ("Militär-Sinfonie")

Dirigent: Wolf-Dieter Hauschild
Solist: Gerhard Oppitz, Klavier


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